依存心の強い人というのは、世の中に一定数存在します。
ただ、実際には依存心は人間から完全に消し去ることのできない感情と言われています。
ですから依存心を抱えて生きるということ自体に問題があるわけではありません。
しかし、その依存心が特別に強い人がいます。
そんなとき、コミュニケーションに問題が起きたりその人の生活に問題が起きたりするわけですね。
しかし完全に消し去ることができないということは、依存心とうまく付き合っていくことが
重要になってきます。
今回は、「適度に、何かに依存して生きよう」ということをテーマに解説していきます。
Contents
依存心とは何か
依存心というのは、
それがなくては生きていけない心理状態
をいいます。
もっと正確にいうと、「生きてはいけないと思い込んでいる」状態を指すといえるでしょう。
アルコール依存症の人が、アルコールを断って禁断症状が出るとします。
しかしそれが直接的に命に関わるわけではありません。
自分の子供に依存している母親が、「あなたは私がいないとダメなの!」とこどもの自立をいくら
阻んだとしても、
こどもが自立したからといって命の危険があるわけでもありません。
しかしその依存対象がなくなった場合はどうなるでしょう。
そんなときは「生きている意味がない」と無気力になったり怒りで我を忘れたりします。
恋愛依存の場合だったら、
「あなたのせいで、人生がだめになりました。責任をとってください」
と恋人を引き戻す取引の材料にしたりもするでしょう。
依存心というのは、「それがなくては生きていけない」「精神的に耐えられなくなる」という危機感を生み出します。
同時に「どういう手段を使ってでも、手放せない」と一定の対象だけに強い執着心を見せることになり、トラブルに発展することもあるということですね。
依存は悪い事なのか
依存心自体は悪いものではありません。
なぜ依存自体が悪として捉えられやすいか?
それは、普通の人は依存心なんてない、という解釈が一般的だからです。
けれども、「なくてはならないもの」は誰しもあるはずです。
旧知の友人。
自分が所属するコミュニティ。
好きな動画を見ながらお酒を飲む時間。
それ自体は、何も悪い要素はありません。
しかし「何がなんでも」なくてはならない状態、たとえば軍資金が底をつきても借金を背負おうともギャンブルに依存するとか、
生活やコミュニケーションが破綻するほど依存心が強くなるようだと、それは健常な依存心ではないといえるでしょう。
また、発達の過程において、誰もが依存心の強い状態を経験しています。
「子ども」という段階ですね。
父や母という存在に依存し、いないと不安で不安で仕方がなくて泣きわめき、とにかく独占したく
なる。
しかし、大人になってからもそのように他人を独占したくなったりずっと依存したり。
ずっと束縛するようであればそれは問題といえます。
依存心の強い人の心理特徴
依存心が強い人の心理特徴は、以下のとおりです。
劣等感が強い
依存心が強い人=劣等感が強い人です。
自分ひとりでは感情を処理しきれない、他人に自分の問題を背負ってもらわないと
生きていけない、という弱さを抱えている人は依存心が強くなる傾向にあります。
自他の分離ができていない
自他の分離ができない、というのは自分中心の物事の考え方しかできないという意味です。
自分と他人は別の存在であり、他人は他人の都合がある、という認識ができません。
課題の分離ができていない
課題の分離というのは、「自分の課題」と「他者の課題」をそれぞれ分けて考えることです。
上記の恋愛依存の例でいうと、
と言うのと同義です。
これは、課題の分離ができていないということになります。
自分が一人で生きていく能力がないから依存しなくてはならないだけ。
つまり「その人が生きていけるかどうかは、その人の課題」であるはずなのに、完全に
「恋人の課題」にすり替わってしまっていますね。
こういう、「自分の弱さは他者がカバーすべきだと思っている」人というのは他人への依存心が格段に強いといえるでしょう。
自分が孤独に耐えられなければ、
となるでしょうし、
自分が不安になるならば、
と、どんどんと言葉や態度を代えて依存心を表出することになります。
自分と向き合う力がない
依存心が強い人は、一人の時間だったり孤独を嫌います。
まるで一人の時間なんてなんの価値もない、誰かと繋がっていなくては意味がない、恋人がいなくては恐ろしくて仕方ない、というような感覚を覚えます。
これは、孤独が自分と向き合う時間だからですね。
自分で感情を処理することが苦手な人は、必ずその処理を他人に任せようとしたり、処理ができないのを他人の責任にしたりします。
自分でどうにか処理できる、と思っている場合、依存というものは起こりません。
自分でなにかしら処理できない問題があるからこそ、他人に依存するわけですね。
母親が、子供に
としきりに話してくる場合は、本当は
力不足が原因であるということから
目をそらすために、子供を利用している
という場合もあります。
自分の現実と向き合わずに済むためには、他人に依存するのが手っ取り早いわけですね。
強い依存心を克服するためには
依存心を克服するためには、まず自分の依存心を自覚する必要があります。
そして、依存心をなくす方法はこの世に存在しない、ということを知ることです。
依存心を自覚する
依存心というものは、どれだけ他人に依存する傾向がある人でも自覚しにくいです。
なぜなら、劣等感が強かったり自分の課題を認識できない人が多いからです。
そういう人でも自分が他人に依存しないと生きていけない、ということをなんとなくは理解しています。
結局「けど子供が自立できないせいで」とか「あの人が不安にさせるから」とか自分の依存心のせいではなく他人のせいだ、という答えを選んでしまいます。
しかし、自覚できたときがチャンスといえます。
依存することで人間関係がいつもうまくいかなくなったりする場合、「この依存体質をどうにかして変えたいな・・・」と考えるきっかけになるからです。
自分が「変えたい」と思ったときが、もっとも依存体質から抜け出す良いタイミングといえるでしょう。
依存心をなくす方法は、ない
依存心がなくなれば、他人に期待せずに、自分だけで処理できます。
が、上述したとおり、依存心というのは完全になくすことはできません。
依存心を自覚して、こういう自分は嫌だからとなくす方法を躍起になって探そうとすれば、
疲れ切ってしまうでしょう。
依存心とうまく付き合う
精神分析学の創始者であるジークムント・フロイトは、自立・自律して生きていくべき、
つまり依存心はなくすべきだと唱えました。
けれどもその後、精神科医であり精神分析学者のハインツ・コフートが確かに強い依存心は
問題を引き起こすけれども、人は社会的な生物であるのに完全に自立なんてそもそもできない、
「成熟した依存」を目指すべきだという考えを提唱しています。
人は、他人に対して「こういう存在でいてほしい」という自分の希望をある程度抱える生き物であって、それを人間から完全に切り離すことはできないわけです。
自分の依存心を否定すればするほど、自分の本心とは裏腹な感情を抱えるわけですから余計に他人への依存心が強くなったり、自分が嫌いになったりしがちです。
「適度な依存」を目指す
完全に依存しないぞ!と意気込むのは心に負担がかかりすぎます。
まずは強い依存心が顔を出した時、「ああ、今自分は相手に依存しているな」と自覚することが大事です。
そもそも、依存はやめようと思ってもやめられないものです。
無理やり完璧にやめようとすると、必ずどこかで反動がきます。
自覚できる場面が増えてきたら、10割依存していたのが「8割の依存になった」ようなものです。
自覚するということは、「今こういう言動をしているのは、自分が弱いからだ」と、自分の課題であるという認識もみられるようになっているからです。
そうしたら次は
依存することで、何を得ようとしているのか?
ということを考えつつ5割の依存にする。
など、少しずつ段階づけることで小さなステップを踏んでいきます。
依存心の強い人への対処法
周りに依存心が強い人がいる、という人もいるでしょう。
依存心が強い人への対処法でもっとも効果的なのは、「適切な距離をとる」ことです。
適切な距離をとる
世の中には、どうしても依存心を抑えられない人がいます。
依存心の強い人同士が引き寄せあうことを「共依存」といいます。
共依存の状態になるとなかなかどちらも問題点から抜け出せなくなってしまいます。
依存というのは、ある意味居心地がいいからですね。
こういう場合は、どちらも依存心に気が付きません。
しかし窮屈さや大きい問題を抱えながらもズルズルと関係が続いてしまう場合が多いです。
特に片方が依存心が強く、片方が振り回されてしまうという場合。
相手を変えようとする前に疲れ切ってしまう場合が大半ですから、距離をとったほうがいいでしょう。
距離をとられた、という状況にならないと相手が自分の依存心に気が付かない場合もあるからです。
また距離を取ろうとしても、距離を詰めてきたり、裏切られたと相手が感じます。
そうすると、さらに大きい問題に発展する場合があります。
依存心が強い人は依存心が強いことを自覚しにくかったり否定することもあります。
ある程度は聞き流しつつ余計に刺激しないような工夫も必要です。
あなたが別れるって言い出したせいだからね。
あなたが傍にいてくれれば、
生きていくことができるのに。
私を生かして幸せにするのが、あなたの役割でしょう